皆さま、GEIT(Governance of Enterprise Information Technology)のエバンジェリストこと、ITコーディネータの元村憲一です。
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ブログの第242回目は、このブログの本題になっている GEITについての続きです。
これまでほとんどは、ISACAの話題を中心にお伝えして来ましたが、第210回目からは、ISACAを離れて、日本のGEIT人材であるITコーディネータについて、お伝えしています。
【IT経営とは?】
ITコーディネータ制度は、経済産業省が、日本の競争力を回復する高度人材として、未来を見据えた構想の中で制度化した割には、10年以上経った現在でも、非常に認知度が低い状態が続いています。
前回に続き「IT経営」と言う言葉につて、お伝えして行きます。
経済産業省のIT経営ポータル(以下を参照)
URL:
https://www.it-keiei.go.jp/index.html
IT経営とは何か?
経済産業省が行っているIT経営の定義は、以下の様に書かれています。
IT投資本来の効果を享受するためには、目的なく、単に現業をIT化するだけでは、不十分であり、自社のビジネスモデルを再確認したうえで、経営の視点を得ながら、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要です。
このような、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義します。
IT経営について
IT経営ポータルには、IT経営についてとして、以下の5項目が記載されています。
・7つの機能と20の行動指針
・IT経営力指標と4つのステージ
・IT経営協議会とIT経営憲章
・IT経営ロードマップ
・各種報告書
・IT経営ロードマップ
【IT経営ロードマップとは】
IT経営憲章に基づき、企業がIT経営を実際に推進するにあたっての取り組みを、IT経営における先進企業の事例を踏まえて、以下の2点として整理したものです。
平成20年6月に初版が発行され、平成22年3月に改定版が発行されています。
1. IT経営の実践に向けた取組
2. マネジメント上の課題
【IT経営ロードマップの詳細】
・日本企業におけるIT経営の実態の変化
ここでは、環境変化について以下の様に書かれています。
かつての日本企業の多数においては、経営、業務、ITの融合は必ずしも十分進んでいるとはいえない状況にあった。
IT化ステージでの部分最適段階の企業の多くは、経営、業務、ITが相互に分断されているのが実態であったといえる。
しかし、昨今、IT経営の実態が変わりつつある。
ここでIT経営の傾向を2つに層別しながらIT経営の現状を見てみる。
【IT経営の2つの傾向】
昨今の企業のIT経営の取り組みを見てみると、次の2つの傾向が見られるため、自社の推進している経営がどちらのタイプであるのかを認識する必要があるとしています。
・タイプA:ITに立脚したビジネスモデルを構築している
・タイプB:従来型の企業経営の中にITを取り込んでいる
◇タイプの定義
A.ITに立脚したビジネスモデルを構築してIT経営を実践している
この経営スタイルとは
ネットやITを活用しなければそもそもビジネスモデルが存在しないような経営スタイルのことであり、多くはインターネット革命の後に開発されたビジネスモデルである。
B.従来型の企業経営の中にITを取り込んでIT経営を実践している
この経営スタイルとは
文字通り今までIT化の波が押し寄せてくる以前から経営をしている、もしくはその業態が存在しているような企業の経営スタイルを指す。
これらは、同じ定量化指標でIT経営度を評価するよりは、分けて考えた方がよりIT経営を推進していく上で理解が進むと思われると書かれています。
ここからは、かなり長くなりますが、IT経営ロードマップ改訂版に書かれている事を、ほぼ引用してご紹介します。
◇タイプの特徴
以下に、それぞれの特徴を記す。
A.ITに立脚したビジネスモデルを構築している企業の特徴
・ITを活用するのが経営上前提となっている
・経営のコア業務の前提にITがあり、IT経営せざるを得ない
・ビジネスモデルが単一または類似性があり、比較的シンプルな構造で収益を上げる仕組みを構築している
・リソースを統一しやすく、ある程度の個別最適がそのまま全体最適として捉え易い条件が揃っている
B.従来型の企業経営の中にITを取り込んでいる企業の特徴
・ITを活用すると現業がより促進されるようITがサポート機能となっている
・経営のコア業務はあくまで非ITであり、ITを活用した方がより良いが必ずしもITが絶対必須の条件ではない
・多角経営に乗り出しており、収益モデルが全く異なるビジネスを複数抱えて経営を行っている、または行おうとしている
・地域やリソース配分が分散されており、経営上ガバナンスを効かせるには対応の難易度が高い
・IT経営の2つの傾向と今後の行方に関する考察
◇タイプAの増加
昨今、特にタイプAの企業が増加しており、今後も増え続けることが考えられる。
情報技術または通信技術の進化は著しく、コア業務の前提をIT ありきで考える企業は増えていくと予想される。
これらの企業は比較的新しく発生している、あるいはタイプBからの派生として特化した形で誕生しているケースが多く、まだ成長段階にある企業が多く見受けられる。
そのため、先に提示した経済産業省の4ステージ別のアンケートでも企業成熟度では、ステージ1またはステージ2に該当すると企業も多く見られるものと予想される。
◇タイプA企業の低ステージの原因と今後の成長
これらの特徴を有した企業は相対的にではあるが、企業規模が小さく、事業をスタートして年月が浅い場合もあるため、IT経営における成熟度が低い場合が少なくない。
いずれ成長するに従い、企業の成熟度が高まることが予想され、抱えている経営課題は時間が解決したり、成長に応じて解決できたりすることが多いと推測される。
また、「ITをどのように活用するか?」という課題というよりも、「どのように管理していくか?」というマネジメントまたはガバナンスの問題がIT化ステージにも影響していることが考えられる。
基本的には企業が成長する際にしっかりとその体制を整える事ができれば解決を図り易いと判断できる。
加えて、上記に傾向Aの特徴として挙げたように、ビジネスモデルが比較的シンプルでありリソースを集中させやすい企業環境にあることから、個別最適、組織間最適、全社最適という企業内部での障壁は比較的低く、個別最適を試行する段階で延長的に全社最適を検討しやすい状況が考えられる。
必ずしも、「IT経営力指標」における4つのステージを意識しなくともIT経営が推進できるような特徴をそもそも有していると考えられる。
今後の成長要因として、なにより経営のコア業務にITが深く絡んでいる事により、経営者ならびに経営層のITにおける経営推進やIT利活用に関する意識やコミットメントが強く、社員全体のITリテラシーが高い事が挙げられる。
さらに、そのような条件が揃っているため、タイプBの企業よりも従業員へのIT活用の配慮を意識する事が、圧倒的に少ない事が挙げられる。
◇タイプAの企業のステージ移行における今後の課題
タイプAに属する企業が今後、IT経営を推進していくうえで注意すべき課題としては以下が挙げられる。
・収益構造の異なる複数のビジネスモデルを有する多角経営に乗り出す場合に、今までと違う「見える化」「共有化」「柔軟化」が必要になる場合がある
・自社のIT経営を超えてバリューチェーン全体を検討する際に、自社の先にある企業のIT活用について取組む必要がある。
タイプAに属するような企業は、今後の成長にあたっていくつかの課題があるものの、自社の成長に応じてITを活用していく事で、今後IT経営における先進企業になっていく要素が強いと言える。
ただし、成長していく段階で情報収集や他企業の意見を参考にすることは重要であり、他のIT経営の事例を参考として確認する事には意味があるといえる。
◇タイプBの企業の二極化
タイプAの企業が台頭する一方で、従来から変わらない経営スタイルの中に如何にITを活用して企業経営を推進していくかを考える、タイプBの企業を見ていくと、二極化が激しいことが見て取れる。
先進企業はますますIT活用度を増し、難易度の高いIT経営や新しいIT経営へのチャレンジに取組んでいく一方で、未だに経営者自身がIT活用の重要性や企業におけるIT経営の取組みを躊躇している企業も多い。
これから成長に合わせてIT経営をしっかりと推進できる環境や要素を準備している企業と、本質を理解しないままに経営課題に上手くITを活用できないでいる企業に二分される傾向が強まっていくものと考えられる。
◇タイプB企業がITを活用する際の難しさ
ここで、経営におけるIT化のニーズを改めて定義すると、不特定多数と取引せざるを得ないということが前提にあると考えられる。
逆に、特定少数に対してある程度定型的に取引をしている経営業態や経営スタイルの場合、そもそもIT化の必要性が高くない。
そのため、IT経営を推進するための意識が高まらない傾向が強い。
また、コア業務の価値がITでは表現できない類のものが多く、これもIT化を推進する上で大きな課題になることが大きい。
上記のような課題があるため、経済産業省の4ステージの低ステージにいると認識している企業が、ITを活用して次のステージに移行することが難しい現実が広がっているといえる。
日本の産業界の競争力強化を鑑みた場合、より強化が必要な領域は、タイプBでステージ1の領域である。
従来からある産業でIT活用に関して無関心か、あまり有効活用していない企業にこそ、その重要性を訴え、地道に支援をしていく活動を続けなければならない。
今後、いかにIT経営の重要性やインパクト、価値をこの領域(タイプBでステージ1)の企業の経営者や従業員に伝え、浸透させてゆくかが重要である。
また、この領域(タイプBでステージ1)の企業については特に、IT化以前に、経営課題および経営上必要な情報が何であるかを、まず明確にすることが重要である(「やる前にやることがある」)。
これは、他の領域の企業も同様である。
また、コア業務がIT前提の企業であるタイプAの領域に属している企業であるとしても、将来的に多角経営を目指すのであれば前述したとおり新しい課題が発生する可能性がありその場合、タイプBでステージ2~4に属する可能性がある。
一方で、タイプBでステージ2~4に属している企業から見ても、IT経営における取り組み自体は充分行っている企業が多いものの、成長著しいタイプAの領域に属している企業のIT経営の取り組みについては、経営が日々加速度的に進化している状況をみると、その取り組みや事例等を参考にする価値はあると考える。
タイプAに属する企業の取り組みの中で、タイプBでステージ2~4の領域に位置付けられる企業が、自社に取り込める工夫は少なくないといえる。
ここまでで述べられている事は、企業には、以下の2つのタイプがあって、IT経営へのアプローチが異なるとしています。
・ITに立脚したビジネスモデルの企業群(=タイプA)
・それ以外の企業群(=タイプB)
IT経営への道は、タイプAはマネジメントの強化を、タイプBはステージの2極化が起こっているので、ステージの壁の打破が必要だとしています。
日本産業界の競争力強化のためには、一番立ち遅れて困難が伴う、タイプBでステージ1の企業の底上げが効果的だと書かれています。
このタイプBでステージ1の企業を支援して行く事は、IT経営を実現するプロフェッショナルと言われている、私達ITコーディネータに課せられた重要な使命の1つです。
少し長くなりましたので、経済産業省IT経営ポータルの、IT経営ロードマップの説明の途中で、終了します。
次回もこのシーズからは、経済産業省IT経営ポータルの、IT経営ロードマップの続きを説明して行きます。
この続きは、次回以降に、ITコーディネータ資格の変遷や、ITコーディネータのバイブルと言われるプロセスガイドラインの内容についても紹介して行きます。
最後まで、お付き合いくださいまして、ありがとうございます。
次回以降も、本題のGEITの話題として、ITコーディネータを中心に、ISACAが認定している資格の最新版が明らかになった段階で、順次お伝えして行きます。
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